• No.002 転職するべき?今の会社に残るべき?

    現在の職場で働き始めて7年ほどになります。業務にも慣れ、後輩の指導やチームの取りまとめを任されることも増えてきました。周囲からの信頼も感じており、ありがたい環境だとは思っています。ただその一方で、このまま同じ会社で働き続けていいのかという迷いが出てきました。仕事自体は大きな問題もなくこなせていますが、最近は成長している実感や新鮮さを感じにくくなっています。役割が増えて責任も重くなってきた分、「このままここでキャリアを積んでいくべきか」「思い切って環境を変えたほうがいいのか」を考えるようになりました。転職も頭をよぎりますが、今の安定した立場を手放すことへの不安もあり、なかなか決断できずにいます。年齢的にもそろそろ方向性を決めたほうがいいのではと焦る気持ちもあります。
    今は動くべきタイミングなのか、それとも今の場所でさらに経験を積むべき時期なのか、アドバイスをいただけたら嬉しいです。

    (ニックネーム:Kさん/30代男性)

    今回は、「残るか、離れるか」という二択そのものよりも、「今の場所で、自分はまだ何を試していないだろう」という問いが静かに浮かび上がってきました。

    七年という時間は、仕事を覚える期間を過ぎて、「任される側」になる節目です。後輩を育て、周囲から信頼され、責任も増えてきた。その変化は決して小さなものではありません。ただ、人は慣れてしまうと、以前なら成長と感じられたことも「当たり前」になってしまいます。成長が止まったのではなく、成長の基準が変わっただけなのかもしれません。

    一方で、環境を変えたいという気持ちも決して間違いではありません。新しい場所に行けば、新しい人、新しい仕事、新しい刺激があります。今抱えている停滞感が、一気に晴れるような気がすることもあるでしょう。

    ただ今回の流れを見ていると、その「転職したい」という思いの中には、「今感じている閉塞感から早く抜け出したい」という気持ちが少し混ざっているようにも感じます。もしそうだとしたら、環境を変えたとしても、しばらくするとまた同じような迷いが顔を出す可能性があります。

    だからこそ今は、「会社を変える」より先に、「今の会社で、自分の役割を変えられないか」を考えてみる時期なのかもしれません。たとえば、業務改善の提案をしてみる。後輩育成の仕組みを作ってみる。これまで誰も手をつけていなかった仕事を引き受けてみる。あるいは、部署を越えたプロジェクトに手を挙げてみる。今まで「与えられた仕事をこなす」ことが中心だったなら、これからは「仕事を作る側」に少しずつ回っていく。その視点が入るだけで、同じ職場でも見える景色は大きく変わります。

    少し気になるのは、「年齢的にも決めなければ」という焦りです。年齢は確かに現実的な要素ですが、焦りは物事を必要以上に二択にしてしまいます。「今決めないと遅れる」「残るか辞めるかしかない」と考え始めると、本当はその間にある選択肢が見えなくなります。けれど人生は、そんなにはっきりした分かれ道ばかりではありません。残りながら挑戦することもできますし、情報収集だけ始めることもできます。資格の勉強を始めたり、興味のある業界の話を聞いたりしながら、自分の気持ちがどう動くのかを見る時間も、立派な前進です。

    不思議なことに、本当に環境を変えるべきタイミングは、「ここを離れたい」という気持ちよりも、「ここでやれることはやり切った」と静かに思えたときに訪れることが少なくありません。今回の流れからは、まだその地点には少し届いていないように感じます。今いる場所には、あなたがまだ形にしていない経験や、誰かのために活かせる知識が残されています。それは派手な成果ではないかもしれませんが、自分の仕事を一段深いものへ育てる種になりそうです。

    もし今、一歩だけ踏み出すとしたら、「辞める準備」ではなく、「今の職場で一つ新しい提案をすること」を選んでみてください。その一歩を踏み出したあとで見える景色は、今感じている迷いとは少し違う色をしているはずです。そして、その景色を見てからでも、「残るか、離れるか」を考えるのは決して遅くないでしょう。